ミックスダウン時の音の質感

以前にも指摘されたことがあったのですが、私の曲の2trミックスは「音質がモワッとしている」という傾向があります。

無理やりに良く言えば「マイルドな耳ざわり」と言えなくも無いですが、要するに「ガツンとエッジの効いたパンチのあるサウンド」の対極であり、物足りないということになるでしょう。

では、なぜこういった音質になってしまうのかを考えてみると、そこには自分の作曲スタイルと密接な関係があったことに気付きます。

私の場合、仕様の決まった音楽を請け負うケースを除いて、曲の完成形を明確に意識した上で作曲に取り掛かることは、ほとんどありません。ある程度のサウンド(楽器)構成を決めたら、いきなりシーケンサ上での作業に入って行きます。

以前のエントリーで下記のようなことを書きました。

アーティスティックな方法とは、ふっと浮かんだイマジナリーなものと上手に戯れる方法のことでしかないのではなかろうか、と思うのです。(「アートにおけるイメージの具現化」

私の作曲の実際は、自分自身の無意識の蓄積から醸造されたであろうアイデア・イメージと戯れ、音にしてみたものに再びインスパイアされながら時間を紡いで行く、そんな感じです。

例えるなら、幼児がクレヨンで絵を描くうちに、紙をはみ出してテーブルにもクレヨンを走らせ始めるような曲づくり、と言えるかもしれません。

大切なポイントは、このプロセス自体が私に充実した音楽体験を与えてくれるということであり、可能ならばいつまでもそうしていたいと思わせられることです。

そして、このことに没頭して行く中で、作曲機材であるソフトサンプラやソフトシンセの音質(ミキサー設定など)は、「いつまでもずっと聴いていられる(戯れ続けられる)心地よさ」という基準で徐々に調整されて行くのです。

結果、自ずと冒頭のような「ガツンとエッジの効いたパンチのあるサウンド」とは程遠い、マイルドな(やもすると眠い)サウンドと相成ります。

最終のミックス段階で修正すればいい様なものなのですが、曲の出来上がりがある意味“戯れの記録”である以上、修正を加えると印象から何からガラッと別物になってしまうため、どうしても躊躇してしまい、完成としてしまうのです。

そんなわけで、「ガツンと…」なサウンドが必要なときはミックスを人に頼むこととして割り切り、自らは何とかこのサウンドを洗練させて行く道は無いものかと、模索する日々を重ねることになるのでしょう。