一般の音楽書

音楽全般について述べられた本の紹介とレビュー。

レビュー『楕円とガイコツ』山下邦彦 著

副題は「小室哲哉の自意識×坂本龍一の無意識」です。両者の作品の譜面とインタビュー記録を豊富に引用しながら、彼らの生み出す音楽の響きの秘密に迫ろうとする、類を見ない奇書です。調性音楽における響きの陶酔性とも言うべき、その感覚的な美質を執拗に追ったドキュメントとも言えるでしょう。 続きを読む »

レビュー『クラシックを聴け!』許光俊 著

シンプルな語り口で大胆に解説する痛快な一冊です。クラシックを聴き始めたものの、延々と繰り広げられる音の洪水に目を回している人には、うってつけでしょう。特に、ソナタ形式という名前は知っているもののその実感がつかめない人は、この本によってグッと近づけるようになるでしょう。 続きを読む »

レビュー『現代音楽のポリティックス』C・ウォルフ/L・ノーノ/近藤譲/他著

現代音楽の現場に立つ五人の作曲家(クリスチャン・ウォルフ、ルイジ・ノーノ、ジャン=クロード・エロワ、ヴィンコ・クロボカール、近藤譲)各氏による講義の記録です。各作曲家が自らの作品ないしは、それ以外の音素材を聴衆に聴かせながら、音楽についての問題を提起する内容の講義を行っています。 続きを読む »

レビュー『名曲の旋律学』ルードルフ・レティ著

副題に「クラシック音楽の主題と組み立て」とあるように、西洋音楽の作曲における骨格のひとつである「主題操作」の概念について、豊富な譜例を挙げながら解説された名著です。 続きを読む »

レビュー『音楽の霊性』ピーター・バスティアン著

音楽という不思議な体験をスピリチュアルに描いた音楽書です。著者の体験から導き出された言葉の数々が穏やかな余韻を与えます。音楽家の心に寄り添うような読書体験をしたい人におすすめです。 続きを読む »

レビュー『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』久保田晃弘 監修

コンピュータテクノロジーと音楽表現の関係に関心のある人向けの本です。具体的な技術や方法論の解説というよりも、各方面の実践者や評論家による考察や批評がメインとなっており、読み物としての傾向の強いものになっています。 続きを読む »

プロジェクト10 「統一感とヴァラエティ:12小節から12音へ」

(このページはプロジェクト9 「新しい耳」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

最後に、『音楽をつくる可能性』プロジェクト10の実践内容の紹介とレビューです。 続きを読む »

プロジェクト9 「新しい耳」

(このページはプロジェクト7 「音楽的アイデアを発展させる」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

続いて、プロジェクト9 「新しい耳」の実践内容の紹介とレビューです。 続きを読む »

プロジェクト7 「音楽的アイデアを発展させる」

(このページはプロジェクト5 「発展のためのポイント」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

続いて、プロジェクト7 「音楽的アイデアを発展させる」の実践内容の紹介とレビューです。 続きを読む »

プロジェクト5 「発展のためのポイント」

(このページは「3.力強い言葉たちに触れてみる」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

ここからは『音楽をつくる可能性』の具体的な実践内容(プロジェクト)についてレビューしていきます。まずはプロジェクト5 「発展のためのポイント」の紹介とレビューです。 続きを読む »

3.力強い言葉たちに触れてみる

(このページは「2.本書の内容と構成」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

ここでは、「音楽をつくる可能性」に収められている“作曲についての言葉”を集めてみました。著者の「静かな自信と熱意」を味わってみて下さい。 続きを読む »

2.本書の内容と構成

(このページは「1.意外と知られていない名著」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

先ほども言いました様に、本書は先生向けの教育書というスタイルを持っています。ですから、先生でもない人間が本書を読むことにどれ程の意味があるのか、と思われるかもしれません。 続きを読む »

1.意外と知られていない名著

(このページは「読んで欲しいこの一冊。『音楽をつくる可能性』特集ページ」の続きです。)

作曲の中身について書かれた本と言えば、和声法や対位法、コード理論といった「理論書」か、作曲家の自伝で語られる創作エピソードといったものがほとんどだと思います。もしくは、「心の赴くまま自由につくりましょう」的な、甘口の作曲ガイドブックが見られる程度です。 続きを読む »

建築は凍てれる音楽である(音楽の構造)~『音楽の不思議』を読んで

※『音楽の不思議』の内容紹介はこちら。

古くから音楽は建築と密接に並べて語られることが多かった様で、表題の「建築は凍てれる音楽である」という一文は、その例として著者も紹介しているものです。この詩的な表現はなかなか素敵なものだと思いますが、皆さんにはどの様に感じられますでしょうか。 続きを読む »

テクノロジーと作曲との関係~『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』を読んで

※『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』の内容紹介はこちら。

この本は監修者曰く、「テクノロジーと表現、テクノロジーと文化、テクノロジーと人間や社会との共時的、通時的な関係を、音楽をモデルとして横断的に探求することを目的としたアンソロジー」とのことです。なにやら取っ付き難そうな印象を与えそうですが、その内容は「テクノロジーは、社会における音楽にどの様な影響を与えて来て、またどの様に変化させて行くのか」を俯瞰しようとするものだと言えます。 続きを読む »

作曲行為の起動~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで

※『大作曲家があなたに伝えたいこと』の内容紹介はこちら。

物事には何でもはじまりがあります。では、作曲行為にとって「はじまり」とはどういったものなのでしょうか。最初の音が選択、決定されて、曲が姿を見せはじめるまでには、どういったことが起こっているのでしょう。作曲家のルトスワフスキは、インタビュアーの「何から書きはじめるのか、基本的な楽想からか、楽想の萌芽からか、あるいは作品の総体的な構想からか」との問いに次の様に答えています。 続きを読む »

音楽における”歴史的問い”の喪失~『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』を読んで

※『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』の内容紹介はこちら。

本書の論考のひとつ、椹木野衣氏の「”音楽”の消滅とその< 痕跡>」から、まずは引用しておきます。

美術史におけるマルセル・デュシャンの試みの例を引くまでもなく、近代以降、「作品」の価値を決定する最終的な基準というものは存在しない。したがって、作品の評価はかつてのように作品そのものの<質>においてなされるのではなく、たとえ物体としては「便器」であったとしても、それが美術館であれ美術市場であれ<流通>することが可能であれば、何であれそれは便器を超えた価値がある、というふうに裏返されたのである。 (p160) 続きを読む »

作曲後に襲い掛かってくる疲労感~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで

※『大作曲家があなたに伝えたいこと』の内容紹介はこちら。

本書は、百人に及ぶ作曲家の、作曲に関する発言をまとめたものです。それぞれの発言に対して、音楽学者である著者がコメントを添えています。その内容は、作曲家の紹介や、時代背景、創作活動に対する考察といったもので占められており、各発言の重みや洒脱さといった雰囲気が面白く、読み物として楽しく、得るもののある本になっています。 続きを読む »

積み上げる作曲 その2~『現代音楽のポリティックス』を読んで

※『現代音楽のポリティックス』の内容紹介はこちら。

シェーンベルク著「作曲の基礎技法」のコラム「積み上げる作曲~『作曲の基礎技法』を読んで」において、音楽の積木を積み上げる作曲についてお話ししました。本書の著者で作曲家の近藤譲氏は、本書において自らの作曲法について述べています。その内容は「積み上げる作曲」で述べたことと大きく関係していますので、これからご紹介したいと思います。 続きを読む »

主題構造という作曲要素~『名曲の旋律学』を読んで

※『名曲の旋律学』の内容紹介はこちら。

クラシックの交響曲に代表されるような「大きな作品」の特徴は、見方を変えれば、「あの大きさにも関わらず全体がバラバラにならず、ひとつの音楽として統一感を感じることが出来ること」と言うことが可能だと思います。そして、作曲をされたことのある方なら、それがいかに困難なことかがご理解いただけるかと思います。 続きを読む »