レビュー『音楽のリズム構造』G・W・クーパー/L・B・マイヤー共著

西洋クラシック音楽を対象にしたリズム論の古典的名著です。“リズム”という概念の枠組みを明確にしつつ拡大し、音楽のリズム構造についての理論を体系付ける試みがなされています。実例(最後はトリスタンとイゾルデの抜粋)を取り上げながら分析を進めると共に、作曲におけるリズムの視点にも言及しています。なお、本書は1968年に出版されたもの新訳です。

レビュー

音楽において「リズム」と言う場合、それが指すものは多岐にわたります。ポピュラーなところでは、8ビートとか4ビート等と呼ぶリズムがあり、また、規則的な律動、躍動感をリズムと呼んでいます。音楽全体から感じる「ノリ」のことをリズムと呼ぶこともあります。「音楽」という言葉が指すものが広大であるように、「リズム」という言葉が指すものもまた、広大なものです。

著者の言葉を借りるなら、「ある旋律が、単に音高の連続ではなくそれ以上のものであるのと同様に、リズムもまた、音長の比率の異なる連続ではなく、それ以上のものだ」と言えるでしょう。

本書では、小さなフレーズを元にリズムの役割を階層化して行き、それを発展拡大し、音楽が生み出すダイナミズムを明らかにしようと試みます。音符の連続というリズムだけではなく、フレーズ間や、まとまりを感じさせる楽節間でのリズムにまで矛先を向け、「曲全体のリズム構造」という視点を提示して行きます。

作曲している時に感じている「曲のまとまり感」を、意識的に捉えたり、操作したりするためのボキャブラリーを、今や古典となった本書は新鮮な発見と共にもたらしてくれます。

書籍情報

『音楽のリズム構造』
G・W・クーパー L・B・マイヤー 共著
出版社:音楽之友社(ISBN:4276109523)
2001年2月28日第1刷発行
サイズ:287ページ

著者について

G・W・クーパー

グローヴナー・クーパー氏は1911年の生まれで、シカゴ大学に勤務の後、1970年頃に退職されました。その著「聴き方を学ぶこと」は今でも読まれているようです。(本書より引用)

L・B・マイヤー

レナード・マイヤー氏は1918年の生まれで、シカゴ大学からペンシルヴァニア大学に移られましたが、すでにそこも引退してニューヨークに済んでおられます。(本書より引用)