3.力強い言葉たちに触れてみる

(このページは「2.本書の内容と構成」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)

ここでは、「音楽をつくる可能性」に収められている“作曲についての言葉”を集めてみました。著者の「静かな自信と熱意」を味わってみて下さい。

作曲とは?

作曲とは音のある特定の瞬間ではなく、音楽の流れに関わることによって成り立つ。つまり音楽家とは、絶えず流れていく音の動きに対峙しているのである。基本的に大切なのは、音の動きをどんな流れにするかということであり、音の流れに竿をさして、流れを止めたり、流れを変えたりすることである。(本書p65より引用。以下ページ数のみ記載)

作曲の第1歩とは、まず取捨選択のプロセスである。素材の中からはっきりした特徴のあるものを好みに照らして吟味する、そしてそこから一番よい音を選ぶのである。(p58)

作曲者の見方は非常に特別なものである。それは作品を進行させながら内側から見る見方であり、構造が成長していく過程を見る見方である。(p264)

作曲で大切なこと

耳で聴いて音楽を分析することは、創造的な聴取を養うものだ。それは音楽体験の核心である。これは音楽をつくりたいと思う人にとっては、特に大切である。(p256)

最終的に、作品がいつ完成したかを知り、それに十分な自信を持つべきなのは作曲家なのだ。批評家でも演奏家でも一般の聴衆でもなく、学者でも分析者でもなく、作品の完成を宣言することができるのは作曲家のみなのである。(p265)

ある意味ではどんな音楽も始まるや否や、いつ、どのように収束するのだろうかという期待を抱かせるものなのだ。(p224)

作曲の技術について

基本的には表現媒体をコントロールし、すべての要素を関係付けて独自の構造をつくり上げることが、作曲技術そのものである。(p142)

メロディとハーモニーは、音楽の中でもっとも人工的な要素である。だからこそ、人間があらゆる手を尽くして磨きをかける分野なのである。(p162)

ちっぽけだけれど、たくさんの重要な構造的なポイントが音楽の流れの中にある。これを見据えることのできる目は一種の技術であり、作曲者のイマジネーションを支えるものでもある。(p250)

分析とは、音楽をつくるための処方箋ではない。分析することによって完全な芸術作品をつくったり、判断の間違いを避けることもできない。音楽は決して数学の問題を解くようなものではない。(p266)

誤解を正す

音楽は、言葉や視覚的なイメージが描くのと同じようには事物を描くことはできない。言葉が描くことができるのと同じように、自分の経験を効果音に置き換えたものが音楽である、というような教え方をしたら、それは罪つくりというものだ。(p59)

作曲がまったくの沈黙のうちに行われることは稀である。“無”から何かをイメージすることなど不可能だ。心の中で聴く音は、今までに経験した音にもとづいた何かなのである。(p109)

音楽の目的とは、最初に刺激となったものを、何らかの形で述べたり、描いたり、イメージ化することではなく、あるいは、作曲家のイマジネーションに最初に働きかけたものを事細かに説明することでもない。(p111)

音画的な経験や歴史的な出来事、文学的あるいは視覚的なアイデア等が作曲家のイマジネーションを刺激するということはあるかもしれないが、これらを音楽に翻訳することが音楽作品をつくるプロセスやその目的ではないということは、どんなに強調してもし過ぎることはない。(p23)

素晴らしい音楽

音楽とは音楽的な諸要素を注意深く変形することによってつくられる持続的な、継ぎ目のない形式であり、最後の音が消え去るその決定的な瞬間へと聴き手をいざなうようにつくられているものなのである。(p181)

音楽形式が、手で触れることのできるような現実のものとは何の関わりも持たないゆえに、音楽には他のどんな表現手段よりも、広い創意工夫の余地がある。だからこそ音楽には普遍的に人に訴える力があり、また変化にも富んでいるのである。(p25)

創造的な聴取とは、音楽にイマジネーションをもって対処することであり、これによって作曲家の音の世界が個々人の中で再創造されるのである。(中略)聴き手は「もし私がこの音楽をつくったとしたら、これは私がそうしたいと思ったものとまさに同じだ」と考えながら音楽に参加し、この胸のおどるような体験によって満足もしながら、しかも自分を凌駕する力を認識することができるのである。(p14)

これだけは言っておきたい

特に大切なのは音楽の構造に関わる問題であり、そして音楽的アイデアを生み出しそれを発展させるためにはどのような手立てが可能かという問題である。この「音楽をつくる可能性」は、こうした疑問にこたえようとしたものである。(p3)

現在、学校の音楽で注目されている作曲において、音楽の構造というものがどんなに重要であるかということを論じたかったのである。(p29)

音楽の時間風景の中にどのような意味あるものが存在しているのか、言葉だけでは語りつくせない。だからこそ、創造的な聴取の技術が必要なのだ。(p25)

芸術作品とは断片的なものではない。部分を寄せ集めたもの以上のものなのであり、だからこそ私達は芸術作品全体が主張するものに接する必要があり、構造全体に関わり、作品の全体性に関与している様々な特徴の相互作用を知るべきなのである。(p149)

ブック・レビューもご覧下さい

さて、ここまで「音楽をつくる可能性」の概容をお伝えして来ましたが、いかがでしたでしょうか。「もっと知りたい!」という方のために、引き続き本書のプロジェクトのいくつかについて詳しくご紹介していきますので、ぜひご覧下さい。

プロジェクト5「発展のためのポイント」へ続く。