レビュー『大作曲家があなたに伝えたいこと』千蔵八郎 著
およそ百人に及ぶクラシック音楽界の作曲家の発言をまとめ、それぞれに著者が解説コメントを加えた本です。目次の抜粋をご覧のように、古くはラモーやクープランから、近年ではクセナキスやリゲティ、武満徹に至るまで、作曲家の百花繚乱といった感があります。
構成は、見開きごとに一人の作曲家が取り上げられており、まず作曲家の発言を、そして著者による解説が続きます。その発言は具体的な作曲活動の苦悩や喜びの中から発せられたものばかりなので、作曲家の創作活動に興味のある方には堪らない内容でしょうし、特に作曲をされる人にとっては「百人の作曲家による講演ダイジェスト」として、気付きと励ましを与えてくれることでしょう。
本書は一見すると、マメ知識をまとめた企画ものの本といった体裁ですが、作曲家に的を絞った内容は貴重で、さらなる読書や研究のための道先案内として有益なものです。
レビュー
ちょっとした裏読みなのですが、作曲家の対外的な発言には、本音で語ったものと皮肉を交えたものとがある様に思います。例えば、その時の聞き役がトンチンカンな質問をした場合に、わざと「はぐらかす発言」をすることが考えられます。
有名な登山家の発言である「そこに山があるから」は、「なぜ登るのか」という愚問(だと登山家は思った)に対するトンチの利いた回答だったのかもしれません。本書に登場する作曲家のなかにも「皮肉家」がいます。作曲家のことに詳しい方は、本書を読みながら「ひねった言い回しをしているなあ」とか、「当て付けているのかな?」とか思われることも数々あることでしょう。
そこに生じる、あなたと千倉氏との捉え方の相違を見付けるのもまた、本書の楽しみ方のひとつでしょう。
この本は他のコラムでも取り上げています
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書籍情報
『大作曲家があなたに伝えたいこと』
千蔵八郎 著
出版社:春秋社(ISBN:4393937465)
1998年12月20日第1刷発行
サイズ:219ページ
『大作曲家があなたに伝えたいこと』の目次
- プロローグ
- 1.クラウディオ・モンテヴェルディ/2.フランソワ・クープラン/3.ジャン=フィリップ・ラモー/4.ジョージ・フレデリック・ヘンデル/5.ヨハン・セバスティアン・バッハ/他
- 16.エクトル・ベルリオーズ/17.ミハイル・グリンカ/18.フェリックス・メンデルスゾーン/19.フレデリック・フランソワ・ショパン/20.ローベルト・シューマン/他
- 40.ガブリエル・フォーレ/41.ヴァンサン・ダンディ/42.レオシュ・ヤナーチェク/43.エルネスト・ショーソン/44.エドワード・エルガー/他
- 63.アルノルト・シェーンベルク/64.グスターヴ・ホルスト/65.チャールズ・アイヴス/66.モリス・ラヴェル/67.アーネスト・ブロック/他
- 72.ゾルターン・コダーイ/73.アントン・フォン・ヴェーベルン/74.エドガー・ヴァレーズ/75.アルバン・ベルク/76.ルイージ・ルッソロ/他
- 84.ジョージ・ガーシュイン/85.フランシス・プーランク/86.カルロス・チャベス/87.アーロン・コープランド/88.ボリス・ブラッハー/8他
- 95.レナード・バーンスタイン/96.ヤニス・クセナキス/97.ジェルジ・リゲティ/98.ピエール・ブーレーズ/99.カールハインツ・シュトックハウゼン/他
- エピローグ/参考文献
著者について
千蔵八郎(ちくら はちろう)
1948年、東京音楽学校(現、芸大)、54年、東京芸術大学音楽学部卒。現在、武蔵野音楽大学教授。(本書より引用)