作曲家が語っている本

作曲家が、作曲のことや自らの創作について語っている本の紹介とレビュー。

レビュー『大作曲家が語る 音楽の創造と霊感』アーサー・M・アーベル著

(※本書は『我、汝に為すべきことを教えん』を改訳・再編集したものです。以下の文章は以前の版にもとづいて書かれたものです。)

ブラームスやR・シュトラウス、グリーグなど、19世紀末の著名な作曲家たちへ「霊感(インスピレーション)とは?」と問いかけた貴重なインタビューが収められています。 続きを読む »

レビュー『未聴の宇宙、作曲の冒険』湯浅譲二/西村朗 著

著者は共に現代音楽界で活躍を続ける作曲家であり、これまでに個性的な作品を世に問うてきた個性的な人物たちです。本書は、そんな両者が創作について縦横に語り合った、奔放な対談集です。 続きを読む »

レビュー『音を投げる―作曲思想の射程』近藤譲 著

「線の音楽」という独自の作曲実践を通じて個性的な作品を発表する傍ら、音楽に対して根元的な問いの眼差しを向け続ける作曲家、近藤譲氏。本書は氏の二十年にわたる期間に書かれた評論をまとめたものです。 続きを読む »

レビュー『音楽を「考える」』茂木健一郎/江村哲二 著

タイトルからは大上段に構えたシリアスな印象を与えますが、実際には平易な言葉によって柔軟で軽妙な対話が繰り広げられており、取っ付き難さはありません。本書が「ちくま新書」としてではなく「ちくまプリマー新書(学生や若年者向け)」として刊行されていることからもそれは伺えます。 続きを読む »

レビュー『クレーの絵と音楽』ピエール・ブーレーズ著

作曲における“秩序”とは、どういった意味を持つものなのでしょうか。秩序をそれ単独として思索するのではなく、そこからどの様な音楽を“演繹”するのかと問うたならば、秩序の遵守から生み出されるものとそれ以外のものとの“ゆらぎ”によって、結果として「秩序から多様性が生み出される」という事実に気付くものなのではないでしょうか。 続きを読む »

レビュー『音楽して生きたい!』エリザベス・スウェイドス著

作曲家を志す人のための応援歌と呼べる一冊です。著者はミュージカルやオペラなどの分野で活躍し、トニー賞へのノミネート経験もあります。そういった分野で揉まれてきただけあって、エネルギッシュであり、また時にシニカルな視線からのユーモアも感じさせる内容です。 続きを読む »

レビュー『大作曲家があなたに伝えたいこと』千蔵八郎 著

およそ百人に及ぶクラシック音楽界の作曲家の発言をまとめ、それぞれに著者が解説コメントを加えた本です。目次の抜粋をご覧のように、古くはラモーやクープランから、近年ではクセナキスやリゲティ、武満徹に至るまで、作曲家の百花繚乱といった感があります。 続きを読む »

レビュー『作曲家の世界』パウル・ヒンデミット著

ドイツの作曲家ヒンデミットによる、自らの音楽論、作曲論を自伝的な要素も含めつつ書かれた本です。原書は1952年にドイツで出版されたもので、時代背景などの面で古さを感じさせる面もありますが、作曲する者としての思いが書かれたその内容は、大きな価値を持ったものです。 続きを読む »

レビュー『音楽の不思議』別宮貞雄 著

「私は、ただ音楽をつくるだけでなく、同時に、『一体音楽とは何なのか』『自分は何のために作曲をするのか』等々、考えなくてはいられないたちであり、そのような発言をし、また文章に書いてきた」──自らそのように述べる著者による評論集の名著です。 続きを読む »

レビュー『現代音楽のポリティックス』C・ウォルフ/L・ノーノ/近藤譲/他著

現代音楽の現場に立つ五人の作曲家(クリスチャン・ウォルフ、ルイジ・ノーノ、ジャン=クロード・エロワ、ヴィンコ・クロボカール、近藤譲)各氏による講義の記録です。各作曲家が自らの作品ないしは、それ以外の音素材を聴衆に聴かせながら、音楽についての問題を提起する内容の講義を行っています。 続きを読む »

レビュー『音楽の霊性』ピーター・バスティアン著

音楽という不思議な体験をスピリチュアルに描いた音楽書です。著者の体験から導き出された言葉の数々が穏やかな余韻を与えます。音楽家の心に寄り添うような読書体験をしたい人におすすめです。 続きを読む »

建築は凍てれる音楽である(音楽の構造)~『音楽の不思議』を読んで

※『音楽の不思議』の内容紹介はこちら。

古くから音楽は建築と密接に並べて語られることが多かった様で、表題の「建築は凍てれる音楽である」という一文は、その例として著者も紹介しているものです。この詩的な表現はなかなか素敵なものだと思いますが、皆さんにはどの様に感じられますでしょうか。 続きを読む »

作曲行為の起動~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで

※『大作曲家があなたに伝えたいこと』の内容紹介はこちら。

物事には何でもはじまりがあります。では、作曲行為にとって「はじまり」とはどういったものなのでしょうか。最初の音が選択、決定されて、曲が姿を見せはじめるまでには、どういったことが起こっているのでしょう。作曲家のルトスワフスキは、インタビュアーの「何から書きはじめるのか、基本的な楽想からか、楽想の萌芽からか、あるいは作品の総体的な構想からか」との問いに次の様に答えています。 続きを読む »

作曲後に襲い掛かってくる疲労感~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで

※『大作曲家があなたに伝えたいこと』の内容紹介はこちら。

本書は、百人に及ぶ作曲家の、作曲に関する発言をまとめたものです。それぞれの発言に対して、音楽学者である著者がコメントを添えています。その内容は、作曲家の紹介や、時代背景、創作活動に対する考察といったもので占められており、各発言の重みや洒脱さといった雰囲気が面白く、読み物として楽しく、得るもののある本になっています。 続きを読む »

積み上げる作曲 その2~『現代音楽のポリティックス』を読んで

※『現代音楽のポリティックス』の内容紹介はこちら。

シェーンベルク著「作曲の基礎技法」のコラム「積み上げる作曲~『作曲の基礎技法』を読んで」において、音楽の積木を積み上げる作曲についてお話ししました。本書の著者で作曲家の近藤譲氏は、本書において自らの作曲法について述べています。その内容は「積み上げる作曲」で述べたことと大きく関係していますので、これからご紹介したいと思います。 続きを読む »

模倣の効用と限界~『音楽の不思議』を読んで

※『音楽の不思議』の内容紹介はこちら。

別宮氏の語り口はとても平明で、「言われてみればその通りだ」と思うことがしばしばです。本書「音楽の不思議」もそんな印象を与えてくれます。何よりも、著者自身が作曲家であり、その言葉には経験に裏打ちされた自信が感じられます。 続きを読む »