オーケストラ打ち込み備忘録(2)DAWのこと
(「オーケストラ打ち込み備忘録(1)音源のこと」からの続きです)
以前は長年に渡りWindows版のLogic Platinumを使用していたのですが、開発元の買収&撤退によってバージョンアップも既に止まっていたため、VSTの互換性などの面で支障が大きくなっていました。そこで、2007年にようやく重い腰を上げてSONARに乗り換えを行った次第です(この辺りの経緯について興味がお有りの方は「PCとシーケンサを一新(前編)」をご覧下さい)。
一般にオーケストラ音楽の打ち込みには、リアルタイム入力、スコア画面(楽譜)入力、ピアノロール入力といった方法がありますが、私の場合は部分的にリアルタイム入力を行いつつも、基本的にピアノロール画面で入力と編集/調整を行っています。
シーケンスソフト(DAW)はSONAR
SONARはVer.7以降、ピアノロールでの編集機能が向上しており、その点が乗り換え時のポイントの一つでもありました。ピアノロールでの編集アクションを自分で自由にキーアサイン出来るため、Logicでの操作体系をそのまま持ち込むことが可能だったのです。
ピアノロールでよく行う操作は、ベロシティ調整、デュレーション(音符長)変更、タイミング微調整、そして各種コントロールチェンジ情報の入力/編集です。
表情付けのキモとして膨大な量のCC(コントロールチェンジ)11を入力するわけですが、その際にはマウスでの直線&自由曲線入力と併せて、MIDIキーボードのホイールでのリアルタイム入力も行っています。
ちなみに、SONARには「CAL」というスクリプト言語が実装されており、これを用いることで煩雑なノート編集を自動化したり、よく行う編集をテンプレート化して適宜適用させることが可能です。私は主にノートタイミングのランダマイズ(ごく僅かに散らす)とレガート(前後の音をデュレーション100%にしてつなげる)に使用しています。個々のスクリプトの実行を任意のショートカットに当てはめられるのが便利なところです。
オーケストラ曲用テンプレート
オーケストラのように編成の大きな音楽を制作するに当たっては、自分なりのテンプレートファイルを用意しておくことが重要です。私の場合、キースイッチパッチを中心に1パートずつトラックに立ち上げた、三管編成+編入楽器のテンプレートを用意しています。
各楽器ごとの表情付けに際してなるべく制約を設けないように、例えばホルンの場合、4(6)パート各々とセクション全体の演奏用として、キースイッチパッチとスタッカート系と特殊奏法のパッチを立ち上げてあります。
ただ、このまま各パートと奏法別にトラックを割り当ててしまうとあまりにも数が増えてしまうので、実際にはMIDIデータでのチャンネル情報を用いてパッチを切り替えるという前提でトラックを用意しています。
例えば、CH(チャンネル)1にソロホルンのキースイッチパッチ、CH2にソロホルンのスタッカートパッチ、CH7にセクションホルンのキースイッチパッチ~としておき、ひとつのMIDIトラック上でノートごとにCH情報を割り振ってやるわけです。
こうしておくと一つのトラック内でソロとセクションなどを扱えるので見通しがよいです。その結果、現在のフルオケ用テンプレートは全体で100トラック弱に抑えられています。これは丁度、使い勝手の良い大きな白紙の五線紙を用意しておくことに等しいです。
テンプレートで大切なのは、それら各パッチ間の音量バランスです。木管、金管、弦、打楽器それぞれのバランスと、ソロとセクションとのバランスを調整するわけですが、簡単な手順としてはff(フォルティッシモ)の全合奏フレーズを用意し打ち込んでバランスを見るのが良いでしょう。その際のお手本としては、CD演奏を参照するのが妥当と言えます。
ffでのバランスが良ければ、弱奏時のバランスは比較的容易に取れます。音色によってはベロシティカーブを緩く(変化幅を狭く)してやる必要があるかもしれません。
QLSOの場合、ベロシティレイヤーの最弱音色がベロシティ値70以下あたりに設定されているため、pp(ピアニッシモ)の全合奏においてはベロシティ値の調整で収まるケースが多いです(例。弦のpp=Vel.50の時、オーボエのpp=vel.65など)。
以前、この調整を行っていた際には、全合奏におけるff金管の圧倒的な存在感のことや、木管が目立つ時というのは音量の大小に因るというより音色の個性が浮かび上がっているから等、改めて気付かされる点も多かったです。今もなお、そういったことを踏まえながら一曲ごとにテンプレートの修正/更新を重ねています。
(※参考。実際の私の作品を下記にまとめてあります。
QLSOを使ったオリジナル曲のリスト)