レビュー『リディアン・クロマティック・コンセプト』ジョージ・ラッセル著
本書を徹底的に実践しようとすればするほど、そこには「何をしてもいい自由」という恐るべき空間が広がっていることに気付くでしょう。初心者は、本書を一般的な音楽理論書として扱うことは避けるべきだと思います。
あらゆる実践的な論理的考察を経た先で出会う本として見るならば、そこには一種の癒しすら感じられるかもしれません。個人的には、本書は読む人を選ぶタイプの本だと思います。
レビュー
私が本書に出会ったのは、学生時代に読んだ雑誌の記事でした。「あのリディクロ(一般にそう略されていたそうです)が邦訳された」と書かれていたのですが、当時は「柔軟な分析理論だ」とか、「新たな作曲概念だ」とか言われるのを断片的に聞くのみで、正確なことは知らなかったです。
今のようにインターネットがある訳でもなく、当時の私は、ひたすら「読んでみたい」と思ったものでした。その後、幸運が重なり入手することが出来ましたが、一読して「?」が頭を駆け巡りました。概念としてはイメージできても、それが音としてイメージし難いのです。
今にして思えば、既成の音楽スタイルから飛び上がろうとする人への、論理的応援歌だったのだと思います。当時の私は、飛び上がろうとしていた訳ではなかった(飛び上がって行くだけの力も無かった)ので、ラッセルの応援も無駄骨だったということでしょう。いやはや、「本が人を選ぶ」ということを体験してしまいました。
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ワイルドカード・コンセプト~『リディアン・クロマティック・コンセプト』を読んで
書籍情報
『リディアン・クロマティック・コンセプト』
ジョージ・ラッセル 著
出版社:エー・ティー・エヌ(ISBN:475493072X)
1993年6月20日初版発行
サイズ:187ページ
『リディアン・クロマティック・コンセプト』の目次
- 日本の読者の皆さんへ
- 「調性組織におけるリディアン・クロマティック・コンセプト」について
- 「河下り」[ River Trip ]に見るジャズの即興スタイルの解説
- 序章
- 第1章:バーティカル調性引力
- レッスン1 コードの「ペアレント・スケール」の決定
- レッスン2 ペアレント・スケールとリディアン・クロマティック・スケール
- レッスン3 第二音階度数による(ペアレント・スケール以外の)コード・スケールの選択
- 第2章:メロディーの分類
- レッスン4 バーティカル・メロディー
- 第3章:ホリゾンタル調性引力
- レッスン5 ホリゾンタル・メロディー
- 第4章:「遠近関係の環」に見る調性引力
- レッスン6 コード・パターンの組み立てとコードの置き換え
- 第5章:調性引力のリディアン・クロマティック順列
- レッスン7 調性引力表の解説
- 第6章:トーナル・リソース(Tonal Resources)について
- レッスン8 リディアン・クロマティック・スケールのアウトゴーイングなトーナル・リソース
- 要約
- 調性組織におけるリディアン・クロマティック・コンセプトの理論的基盤
- 後記
- 音楽を通して世界を考える(対談/ジョージ・ラッセル:武満徹)
- ジョージ・ラッセルのリディア概念/武満徹
- オーネット・コールマンと調性
- 付録 I、II、III/用語解説/用語索引/ディスコグラフィー/問題の解答
著者について
ジョージ・ラッセル
1923年オハイオ州シンシナティ生まれ。多くのジャズ・ミュージシャンを輩出しているウィルバーフォース大に進学、1944年にNYに進出した。1953年、「リディアン・クロマティック・コンセプト・オブ・トーナル・オーガニゼーション」を発表する。