レビュー『音と音楽の基礎知識』大蔵康義 著

「音(音響)の基礎知識」という内容の本はよく見かけます。「音楽の基礎知識」という内容の本も同様によく見かけます。そんな中、その双方を一冊にまとめ上げたのが本書「音と音楽の基礎知識」です。

作曲を行うとき、感性や音楽理論に注目することはあっても、「音の生理学」や「音の物理学」、「音の心理学」にまで意識を向けることは、なかなか出来ないものです。本来作曲者は、音楽にまつわる出来事に対して常にオープンであるべきでしょうが、こと「~学」と付くものは敬遠しがちになってしまいます。

しかしその点、本書の第3章「音の認知と音楽構造」は、音の科学的側面と音楽現象(体験)とをうまく組み合わせて説明されています。例えば、音色の時間変化についてや、和音のボイシングと倍音の関係などは、即活用できる知識だと言えます。もちろん、基礎知識と銘打つだけあって、あらゆる要素が網羅されています。

書籍情報

『音と音楽の基礎知識』
大蔵康義 著
出版社:国書刊行会(ISBN:4336041229)
1999年2月14日第1刷発行
サイズ:258ページ

『音と音楽の基礎知識』の目次

  • 第1章 音の物理と聴覚
    • 音の性質/波の性質/固有振動/空気振動の変位曲線/楽譜と記譜法/振動数と倍音/音階/音程測定の基準/音の協和/結合音/出力と音量/耳の性質と構造/聴覚の精度/音色と波の合成
  • 第2章 音の科学
    • 音の記録/記録の機器(マイクロフォン)/楽器の録音/音の再生/増幅器(アンプリファイア)/シンセサイザ/音響効果
  • 第3章 音の認知と音楽構造
    • 音の認知/音楽構造/現代の音楽/音の配置/楽曲の評価と提示
  • 巻末附録
    • ギリシャ文字/SI接頭語/数/国際単位系/主な計量単位一覧/両記号/ローマ字への置き換え

著者について

大蔵康義(おおくら やすよし)

昭和11年2月東京都生まれ。東京芸術大学音楽学部器楽科卒業後、ABC交響楽団など長年に亙り演奏畑を歩む。かたわら、情報技術の音楽分野に於ける応用に関心を抱き、音響解析、情報機器による楽器特性の判別や演奏解析などの研究を手掛ける。東京芸術大学講師等を経て、現在日本大学芸術学部音楽学科助教授。日本音響学会員。(本書より引用)