最近の記事
3.力強い言葉たちに触れてみる
(このページは「2.本書の内容と構成」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)
ここでは、「音楽をつくる可能性」に収められている“作曲についての言葉”を集めてみました。著者の「静かな自信と熱意」を味わってみて下さい。 続きを読む »
2.本書の内容と構成
(このページは「1.意外と知られていない名著」からの続きです。詳しくは「読んで欲しいこの一冊」をご覧下さい。)
先ほども言いました様に、本書は先生向けの教育書というスタイルを持っています。ですから、先生でもない人間が本書を読むことにどれ程の意味があるのか、と思われるかもしれません。 続きを読む »
1.意外と知られていない名著
(このページは「読んで欲しいこの一冊。『音楽をつくる可能性』特集ページ」の続きです。)
作曲の中身について書かれた本と言えば、和声法や対位法、コード理論といった「理論書」か、作曲家の自伝で語られる創作エピソードといったものがほとんどだと思います。もしくは、「心の赴くまま自由につくりましょう」的な、甘口の作曲ガイドブックが見られる程度です。 続きを読む »
建築は凍てれる音楽である(音楽の構造)~『音楽の不思議』を読んで
古くから音楽は建築と密接に並べて語られることが多かった様で、表題の「建築は凍てれる音楽である」という一文は、その例として著者も紹介しているものです。この詩的な表現はなかなか素敵なものだと思いますが、皆さんにはどの様に感じられますでしょうか。 続きを読む »
テクノロジーと作曲との関係~『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』を読んで
※『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』の内容紹介はこちら。
この本は監修者曰く、「テクノロジーと表現、テクノロジーと文化、テクノロジーと人間や社会との共時的、通時的な関係を、音楽をモデルとして横断的に探求することを目的としたアンソロジー」とのことです。なにやら取っ付き難そうな印象を与えそうですが、その内容は「テクノロジーは、社会における音楽にどの様な影響を与えて来て、またどの様に変化させて行くのか」を俯瞰しようとするものだと言えます。 続きを読む »
“型”としての作曲技術~『作曲の基礎技法』を読んで
まずこの本は、作曲の技術的側面に的を絞った技術書だと言えるでしょう。音楽としての「形」を成立させるための技術、身に付けるべき音楽の「型」といったものを、数個の音符から大規模な形式に及ぶまで具体的に説明しています。 続きを読む »
作曲行為の起動~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで
物事には何でもはじまりがあります。では、作曲行為にとって「はじまり」とはどういったものなのでしょうか。最初の音が選択、決定されて、曲が姿を見せはじめるまでには、どういったことが起こっているのでしょう。作曲家のルトスワフスキは、インタビュアーの「何から書きはじめるのか、基本的な楽想からか、楽想の萌芽からか、あるいは作品の総体的な構想からか」との問いに次の様に答えています。 続きを読む »
音楽における”歴史的問い”の喪失~『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』を読んで
※『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』の内容紹介はこちら。
本書の論考のひとつ、椹木野衣氏の「”音楽”の消滅とその< 痕跡>」から、まずは引用しておきます。
美術史におけるマルセル・デュシャンの試みの例を引くまでもなく、近代以降、「作品」の価値を決定する最終的な基準というものは存在しない。したがって、作品の評価はかつてのように作品そのものの<質>においてなされるのではなく、たとえ物体としては「便器」であったとしても、それが美術館であれ美術市場であれ<流通>することが可能であれば、何であれそれは便器を超えた価値がある、というふうに裏返されたのである。 (p160) 続きを読む »
作曲後に襲い掛かってくる疲労感~『大作曲家があなたに伝えたいこと』を読んで
本書は、百人に及ぶ作曲家の、作曲に関する発言をまとめたものです。それぞれの発言に対して、音楽学者である著者がコメントを添えています。その内容は、作曲家の紹介や、時代背景、創作活動に対する考察といったもので占められており、各発言の重みや洒脱さといった雰囲気が面白く、読み物として楽しく、得るもののある本になっています。 続きを読む »
積み上げる作曲 その2~『現代音楽のポリティックス』を読んで
シェーンベルク著「作曲の基礎技法」のコラム「積み上げる作曲~『作曲の基礎技法』を読んで」において、音楽の積木を積み上げる作曲についてお話ししました。本書の著者で作曲家の近藤譲氏は、本書において自らの作曲法について述べています。その内容は「積み上げる作曲」で述べたことと大きく関係していますので、これからご紹介したいと思います。 続きを読む »
主題構造という作曲要素~『名曲の旋律学』を読んで
クラシックの交響曲に代表されるような「大きな作品」の特徴は、見方を変えれば、「あの大きさにも関わらず全体がバラバラにならず、ひとつの音楽として統一感を感じることが出来ること」と言うことが可能だと思います。そして、作曲をされたことのある方なら、それがいかに困難なことかがご理解いただけるかと思います。 続きを読む »
積み上げる作曲~『作曲の基礎技法』を読んで
著者は、作曲の初心者に対して次のようなアドバイスをしています。
初心者は、これから創造しようとする楽曲を全体像として(一気に)心にえがくことは不可能である。そこで、簡単なものから複雑なものへとしだいに進めていって、最後に全体像を形成するようにしなければならない。(中略)作曲の手始めに、音楽という積木を積み重ねて、それらを知的に、たがいに関連させることからはじめるのが、もっとも効果的だと思う。 (p17) 続きを読む »
模倣の効用と限界~『音楽の不思議』を読んで
別宮氏の語り口はとても平明で、「言われてみればその通りだ」と思うことがしばしばです。本書「音楽の不思議」もそんな印象を与えてくれます。何よりも、著者自身が作曲家であり、その言葉には経験に裏打ちされた自信が感じられます。 続きを読む »
理解し、意味付けたい欲望~『楕円とガイコツ』を読んで
タイトルからはとても音楽に関する書籍とは思えないのですが、その内容は著者のこれまでの著作を包括し、かつ反省と気付きに溢れたもので、大変読み応えのあるものになっています。本書は、強いてジャンル分けするならば音楽理論書や作曲技法書といったものではなく(もちろんそういった読み方に耐え得る書籍であると思いますが)、「音楽批評」になると思われます。 続きを読む »
音楽は自然の法則か~『音楽する精神』を読んで
世の中には自然指向と言える様な、人工ではなく自然から生まれたものの方が価値があるとする見方があります。そして、音楽の世界にもその価値体系があります。厳密には、自然現象に依拠したものに価値があるとする、と言うべきでしょうか。それは「自然倍音列」を中心とした価値体系のことです。 続きを読む »
クラシックがクラシックである理由~『クラシックを聴け!』を読んで
今回は、舌鋒鋭い批評を繰り広げている許光俊氏の「クラシックを聴け!」を取り上げてみます。本書はサブ・タイトルに「お気楽極楽入門書」とありますが、その内容は鋭く、下手な音楽書を読むよりも作曲に対する考察につながると思われます。 続きを読む »
古今の音楽家たちの「作曲に関する発言」その4
■武満 徹(作曲家)
「自然なものを大事に・・・人間も自然の一部でやっぱり自然・・・自然というよりも、宇宙だよね。もっと宇宙的な仕組み、システムを本来のものに、元々の姿にしとかないと。音楽なんかをやるっていうのは、結局、そういうコスミックなシステムっていうのを恐れる、敬う、尊敬するっていうことだと思うんですよ。まあ、そこまで僕の音楽はいってないけど。その一つの形、形式、音楽はその一つの形。イマジナリーな自然だ」マリオ・A 著:「カメラの前のモノローグ」より
古今の音楽家たちの「作曲に関する発言」その3
■国安 洋(美学者)
「日常では我々は音楽を聴きたいように聴いている。それは個性的であるとして好ましい聴き方ともみなされている。しかし、これも美的享受とは無縁であるばかりでなく、我々の聴体験にとって決して好ましいことではない。聴きたいように聴くことは、聴きたいようにしか聴けないことを意味しているからである。これは耳の硬化あるいは偏向化であり、耳の暴力になりかねない」国安洋 著:「《藝術》の終焉」より
古今の音楽家たちの「作曲に関する発言」その1
■山田 耕筰(作曲家)
「作るのではない。生活から生むというのが私の創作上の信条だ。生むまでの苦心、日一日の精進だ、精励だ、刮目だ。いささかの油断も無い、全く言語に絶えた、真剣な生活そのものだ」千倉八郎 著:「大作曲家があなたに伝えたいこと」より